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スターリングラードの戦い 戦車の守り人5

「おい、そっちは大丈夫か?足音は?」
「ああ、このルートはなら・・・さっきも言ったけど、少し遠回りになるが、ジオンの制圧地域から離れられる」
 ソコロフとキースが先陣を切りながら呟いた。ここは、スターリングラード市内をくまなく流れる下水道の中である。すでに下水道の入り口から歩くこと30分。2、3人の敵に遭遇しただけで、目立った戦闘は発生していない。強烈な悪臭と真っ暗な中で、ソコロフ達は方向感覚を失いかけながらも、キースの知識を頼りに懸命に進み続けた。
「シッ!何かいる」
 全員が耳を澄ました。かすかに、上から音が聞こえてきた。そして、近づいてくるにつれて明らかにMSと判断できるようになり、それが地響きとなってソコロフ達を驚かせた。
「ジオン・・・軍・・・・」
 新しい獲物でも見つけたのだろうか。ザクのマシンガンがうなり声を上げて撃ち始めた。やがて、マシンガンが撃ち方をやめると同時に、大きな爆発があった。戦車か何かがやられたのだろう。
「ザクか・・・」
 キッパー軍曹がため息をついた。
「我々は本当に厄介な相手と戦っているな・・・。ゲリラ戦で隠れながら戦っても、弾薬が無くなればおしまいだ」
「ですが、敵も同じです。後方の補給路を断てば、あんな化け物も鉄の塊になる」
「果てしない攻防戦だな。お先真っ暗だ」
 キースがいきなり手で「止まれ」の合図を出した。そして、ゆっくりと地面に伏せた。
(?・・敵か?・・・)
 その状態でいること約1分、前の方から2人の話し声が足音と共に聞こえてきた。ソコロフがこっそり首を上げて見つめると、ジオン軍の歩哨が2人、ゆっくりとこちらに向かっていたのである。アサルトライフルを肩から担ぎながら呑気に2人は歩いていた。
「この辺りの連邦のブタ共は潰したハズだ」 
「いや、まだいるかもしれない。この地下道ならばな」
「地下道か・・・。厄介な所だな。街中に張り巡らされていてまるで迷路だ」
「それに、敵が隠れて移動するには最適だな」
 戦場だというのに、ここは平和な空間だと思っているのだろう。キッパー軍曹は迷っていた。攻撃するか、このまま見逃すか・・・。歩哨を倒せば、おそらく銃撃戦の音が外に漏れて、応援が来る可能性がある。持っている武器は、皆アサルトライフルと手榴弾2個のみ。しかも、キッパー自身は脚を負傷していて思うように動けない。
「なぁ、この間配られた官給品のタバコ、質がまた落ちたぞ」
「また落ちたのか。ったく地球のタバコはクソばっかりだな。本国製のタバコが吸いたいぜ」
 先頭のキースと歩哨の距離はやがて30Mまで縮まり、キースの視界には2人軍靴のヒモまでくっきりと見えてきた。額から汗がタラタラと流れ、くすぐったくなった。
「でも、その代わりフランスで分捕ったワイッ!」
 歩哨の片割れが話し途中にいきなり倒れた。直前に「プスッ」という小さな弾のような音が聞こえたような気がした。もう片方の歩哨はライターの火を一生懸命つけようとして、あさっての方向に向いていたので、すぐには気付かなかった。
「ん?ワインがどうした?」
 突然話が途切れたので聞き返そうと振り返った瞬間、残った歩哨の額に弾が命中して後ろに倒れた。
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スターリングラードの戦い 戦車の守り人4

 作戦会議中の間にも、ジオンの攻撃は続いていた。絶え間ない機関銃の音が鳴り響き、今にも防衛線は崩壊してもおかしくない。
「戦車は何両ある?」
「1両です・・・」
「1両!?他はどうしたんだ!」
 人民委員が驚くのも無理ない。
「全て、ジオンの攻撃でやられました」
「そうか・・・仕方ない、作戦変更だ。戦車を包囲網から突破させ、付近の「第227戦車連隊」に合流させる。我々は突破支援をする。いいか、あくまで戦車の脱出を第一と考えるんだ。最悪の場合、工場は放棄しても構わない」
 あくまで「戦車の脱出」が第一ならば、歩兵隊が全滅する可能性が高い。人民委員もそれを覚悟の上でだろう。
「ズボフ少佐。まずは、操車場に向かい、貨車から武器・弾薬を調達しましょう。あそこならまだ敵の手に落ちてはいないはずです。そこまでの進路の確保をお願いします」
「だが、戦車がそこまで行けるかが問題だ。特に「ザク」に遭遇すると厄介なことになる」
「人民委員殿、そこは我々にお任せください。屈強の対戦車部隊がまだ残存しております」
「おお、頼もしいな。援護は少佐の「第58特別中隊」に任せよう。周辺の制圧には「第4混成中隊」を。ヤコヴィッチ中尉。戦車を頼んだぞ」
 そう言うと、人民委員は地図を指差した。
「よし、まずは操車場までの進路確保だ。随時部隊を前に出させろ!」

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スターリングラードの戦い 戦車の守り人3

 おそらく、新任の中隊長の挨拶か何かだろう。
「失礼します」
 静かに本部のドアを開けた。中には人民委員が2人と、将校が5人ほどいた。そして、真ん中にいた少々小太りの人が声を出した。
「おお、君がここの担当指揮官の・・・」
「ヤコヴィッチ中尉であります」
「ああ、中尉。私が中隊長代理のズボフ少佐だ。挨拶代わりに談笑したいところだが、事態が事態なのでとりあえず簡潔に話そう。その前に、中尉、今第1プラントの状況はどうなっている?」
 少佐自身、自分が中隊長になるとは思っていなかったのだろう。ヤコヴィッチは、壁に貼り付けてあった工場の地図を指差しながら話し始めた。
「今現在、我々は工場南部に位置する第1プラントと第3プラントの2つの施設を拠点として陣地を構築しております。敵との直接の交戦は少なく膠着状態にありますが、散発的なゲリラ攻撃や定期的にあるジオン空軍による爆撃などで、死傷者が増大しています」
「そうか・・・こちらから出るつもりはないのか・・・?」
 少佐は、人民委員を横目に小さな声で返事をしてきた。
「ええ、今までに何度か挑戦したのですが、この間の第3プラント奪還以外は全て失敗し、負傷者が今も取り残されています・・・」
「だが、それは戦力が整っていなかっただからだろう?今なら、増援も来た。戦力が増大したのだから、こちらから攻めても構わないだろう」
 監視していたラスコフ人民委員が口を挟んだ。
「しかし人民委員殿、大規模な反撃を開始するには入念なヴォルガ河対岸の砲兵隊による支援砲撃を受けて、ある程度敵の戦力を疲弊させるか、外部から別部隊による突破を図らなければ・・・」
 ズボフ少佐が、まるで教科書に書いてあるような模範的な事を並べた。
「ふん!そんなもの無理に決まっているだろう。我々「第4混成中隊」と「第58特別中隊」のみで突破を図るのだ。他の手を借りる暇などない」
 相変わらず人民委員は言動が冷たい。だが、教科書どおりにしか考えていないズボフ少佐も困る。
「それは・・・・・はい、分かりました。なんとか突破できるようにします」

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スターリングラードの戦い 戦車の守り人2

 人民委員とは、各中隊に随伴する監視部隊のことで、命令に逆らったり、反逆行為をするような人がいないかを監視している。さらに、作戦に関する発言権も持っているので、少しでも弱腰な内容だと、強制的に変えられてしまうのだ。
「ま、何はともあれ今は呼び出された俺が中隊本部に出向く必要があるようだな」
 ヤコヴィッチは、中隊本部の命を受けて、戦車の操縦ができる数十名の兵士を引き連れて、このトラクター工場で戦車を受領すべく来ていた。そこに、ちょうどジオン軍が攻めてきたのである。
 突然降りかかってきた砲弾と、どんな攻撃も寄せつけない巨大な人型兵器「ザク」の前に、工場付近一帯に展開していた連邦軍は総崩れとなった。ヤコヴィッチ達も合流し、奮戦の末、なんとかザクと戦車を倒し、跳ね返した。が、払った犠牲は大きく、最初稼働していた15両の戦車と、これからヤコヴィッチ達が受領する新品の戦車10両が、破壊された。残ったのは、攻撃をギリギリ受けなかった第1プラントにあった、故障していて現在修理中である1両のみだった。また、工場を防衛する戦力の大幅な低下によって、防衛範囲が狭まってしまった。さらに、ジオン軍はすぐさま増援を送り込み、戦車やザクなどの大型兵器を投入せず、短砲身の小型カノン砲や迫撃砲の支援を受けつつ、歩兵や工兵を大量に投入してきた。そのせいで、まだ立ち直れていなかった連邦軍は、さらなる痛烈な攻撃をもろに受けることになった。次々とジオン軍のサンドバック状態になった部隊が、各施設で孤立し、各個撃破されていった。ついに、連邦軍が守っているのは唯一、第1プラントだけになってしまったのである。
 それからしばらくの間孤立状態にあったが、敵も疲弊しているらしく、膠着状態にあった。そんな中、味方の空軍の必死の空爆とヴォルガ河対岸の砲兵の砲撃の支援を受けて、味方の部隊が包囲網を突破してきた。それが、ヤコヴィッチの所属する「第4混成中隊」と「第58特別中隊」であった。それまで一番階級が高かったヤコヴィッチに代わり、ブレジーネフ中佐が指揮をとることになった。それから、増援部隊とともに第1プラントの防衛線を強化し、日夜続くジオンの爆撃に耐えながらも陣地を構築した。また、時々こちらから攻撃を仕掛けたりしてすぐ隣の第3プラントを奪還するなど積極的になり始めていた。だが、再び始まったジオン軍の混成部隊による波状攻撃に晒され、部隊の消耗スピードが早まった。また、突破口を開いた後方の補給線が断たれ、また孤立してしまった。
「もうじき、弾薬も食料も底をつくだろう。そうなったら俺達は・・・」
 反撃には出るものの、はっきり言って敗北するのは目に見えている。誰もが悟っているのだろうが、口には出さない。
「運任せってとこか・・・」
 ヤコヴィッチは、ため息をつきながらも3階の持ち場から、中隊本部のある地下の貯蔵庫へと向かった。

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スターリングラードの戦い 戦車の守り人1

ジオン軍は「スターリングラード」全域での攻撃を始めた時、重要なポイントをいくつか決めた。それは、市街地を占領する時に、ジオン・連邦両軍にとって重要な拠点である。たとえば、戦車工場や、船着き場、燃料貯蔵所などだ。まず、市街地をある程度見渡せる「ママエフの丘」を奪取し、その後、歩兵、特技兵、工兵、砲兵、戦車隊、MS隊などを混成させた「戦闘団(カンプフグルッペ)」が市内に散らばって制圧する、という2段階になっていた。「戦闘団」の中にも何種類かあり、例えば直接市街地の敵部隊に切り込みをかける先鋒の部隊は、歩兵や工兵が多く配置されており、逆にMSの数が少ない。

 そして、市街地の北に位置する「ミコルスキートラクター工場」もまた、ジオン軍の重要拠点の一つとされていた。
「まいったな・・・エンジンがかからん」
「ええ、あと数時間あれば直ると思うのですが、なにしろ専門の技術者がいませんので・・・」
 戦車隊を指揮するヤコヴィッチ中尉とその部下のボロゾフ伍長がため息をついた。
「で、ボロゾフ。戦車はあと何両残ってる?」
「それが・・・・コイツを除いてあと2両しか残ってないんです・・・」
「へっ?あとは?どうした?」
「他は、ここに逃げ込む前に全部がザクの攻撃で・・・」
「そんなバカなっ!たかがザク2機に全滅したのか?」
「はい・・・」
「たった3両で何ができるというのだ・・・」
 もともと、このトラクター工場では、一年戦争勃発後、生産ラインをトラクターなどの農業機械から戦車などの兵器に変えていた。もう少しでミコルスキー工場製第一次車が生産されるはずだったのだが、それを間近にして、ジオン軍の攻撃を受けてしまった。幸い、全面占領までは至らず、肝心の生産ライン自体は守り切れたが、そう長くは持たないだろう。
「ブレジーネフ中佐は何と言っているんだ?」
「中隊本部は、人民委員の命令により、工場の死守を最優先するようにと・・・」
 どうやら部隊の実権は人民委員にあるらしい。
「それと、ブレジーネフ中佐は反逆の疑いで射殺され、今は代理のズボフ少佐が指揮をとっています」
「ふざけた話だ。どうせ、中佐が人民委員に口出ししたのだろうな]

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職業 鉄道員
趣味 ガンダム・ 旅行・鉄道

好きなアニメ ガンダム系
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